アメリカで「ゾンビ鹿病」なる鹿の病気が話題になっています。
感染した鹿がゾンビ状態になって死んでしまうというこの病気、いったいどのようなものなのでしょうか。
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ゾンビ鹿病とは?
この「ゾンビ鹿病」は正式名称を「慢性消耗病(CWD)」といい、致死性の感染症です。
アメリカでは24の州、カナダで2つの州で発症が確認されており、発症しているのは
などのアメリカ大陸に分布している鹿です。
ゾンビ鹿病の原因
ゾンビ鹿病は、狂牛病やクロイツフェルト・ヤコブ病と同じく「プリオン」という感染性因子によって伝染する病気です。
プリオン病は、脳などの神経組織に急速に影響を及ぼします。
ゾンビ鹿病の症状
ゾンビ鹿病(慢性消耗病)に感染した鹿は、
- 脳みそがスポンジ状になる
- 体重が減り痩せ細る
- 目がうつろになる(昏迷)
- ずっと同じところをウロウロする(歩行異常)
- よだれや尿を垂れ流す
などの症状を発症します。
発症から死ぬまでの期間は様々ですが、早ければ数日、長くても1~2年程度で死に至ります。
ゾンビ鹿病の感染経路
先述のとおり、ゾンビ鹿病はプリオン病です。
プリオンはタンパク質の一種で、動物同士の直接接触(プリオンの経口摂取)によって感染するのはもちろん、動物の死骸にもプリオンは残っており、何十年も土壌内に感染力を有したプリオンが残ることもあります。
ゾンビ鹿病の場合、この感染源となるプリオンが鹿の骨や肉や脳以外にも血液や唾液、尿や便からも検出されています。
プリオンは細菌やウイルスと違い、消毒や煮沸などで死滅することはなく、汚染した物質を確実に処理するには焼却処分するしかないと言われています。
ゾンビ鹿病が人間に感染するかもしれない
ゾンビ鹿病(CWD)自体は1976年に最初に確認された病気で、2001年ごろからアメリカで流行し始めて問題になっていたものです。
それが今回なぜ話題になっているかというと、人間にも感染する可能性が出て来たからなんです。
従来はゾンビ鹿病はシカの間だけで感染する病気と考えられていましたが、今月23日に米科学メディア「Live Science」に、ゾンビ鹿病を発症したサルに関する研究結果が発表されたのです。
これは実験でゾンビ鹿病に感染した鹿の肉を与えられたサル(マカクザル)がゾンビ鹿病に感染したというものです。
鹿以外の種に感染可能であることが判明したため、もしかしたら人間に感染する能力があるかもしれない、ということで話題になっています。
また、プリオンは自ら進化する能力を備えているため、今現在人間に感染する能力がなくても、近い将来ヒトに感染する形に進化する可能性も充分あります。
日本ではゾンビ鹿病(CWD)は発生していない
鹿がゾンビ状態になって死んでしまうこの鹿ゾンビ病、幸い日本ではまだ発症例は確認されていません。
ただし、韓国では発症例が報告されているため、日本でもいつ発生してもおかしくない状況と言えるでしょう。
鹿や鹿肉に接するときは常に鹿ゾンビ病のことを頭の片隅に置いておきましょう。
まとめ
シカだけではなく「種の壁」を超えて感染する能力があることが明らかになった鹿ゾンビ病(慢性消耗病)。
以前狂牛病が流行した時は牛肉の買い控えなどの動きがありましたが、今回は元々流通量の少ない鹿肉が対象ということであまり大きな騒ぎにはならないかもしれません。
ただ、鹿ゾンビ病に感染した鹿の肉を万が一食べてしまったら、感染したプリオンを体内に取り込んでしまうことにもなりかねません。
不用意に鹿ゾンビ病のプリオンを摂取しないためにも、鹿肉を食べる時は産地を確認してアメリカ産は避けるなどの自衛をしておくに超したことはないでしょう。