世界の鹿図鑑

現在世界中に生息しているシカ科の動物は約30数種類います。(絶滅済みの種を除く)


 

シカ亜科

  

シカ族

 

ニホンジカ

シカ属

日本国内で見られる鹿のほとんどがニホンジカです。

北海道で見られるエゾシカや九州のキュウシュウジカなども、すべてこのニホンジカの亜種です。

学名の和名に「ニホン」と付いていますが、日本固有の種ではなく、中国東部や台湾、朝鮮半島にも分布しています。

 

アクシスジカ

アクシスジカ属

画像引用元:バーチャルひがしやま動物園&植物園

アクシスジカはインドやネパールで一般的に見られるシカです。

ニホンジカと同じぐらいの大きさですが体の白い斑点模様はニホンジカよりも濃く、一年中消えることがありません。
(ニホンジカの斑点は冬毛になると消えてしまいます)

 

ホッグジカ

アクシスジカ属

画像引用元:西遊旅行

ホッグジカはインド北部やミャンマー、タイ、インドネシアなどに生息する中型の鹿です。

ニホンジカよりやや小さく、単独行動を好みます。

 

バラシンガ

バラシンガ属

画像引用元:Exotic Big Game Hunting

バラシンガはインド大陸(中央インド~北インド)で見られる大型のシカです。

バラシンガの特徴としては、ツノの分岐の多さが挙げられます。

多くのシカの角が3分岐程度である中、バラシンガの成体(オス)は10~14分岐の角を持ち、中には20分岐もする個体もあるほどです。

 

ダマジカ

ダマジカ属

画像引用元:National Geographic

ダマジカは主にヨーロッパや小アジアに分布している中型のシカです。

角の先が手のひら状に平たく広がっているのが特徴です。

 

ペルシアダマシカ

ダマジカ属

画像引用元:Cyprus Island

ペルシアダマシカは「メソポタミアのダマジカ」という意味の学名を持つシカで、その名の通りエジプトやメソポタミアにルーツがあります。

通常のダマジカより大きなツノを持ちますが、ダマジカほどツノは平たく広がっていません。

分布地域は北イランやイスラエル北部などですが、現在絶滅の危機に瀕しています。

 

ターミンジカ

ターミンジカ属

画像引用元:壁紙.com
ターミンジカはインドやカンボジア、タイ、中国等に生息しているシカです。

ニホンジカより少し大きな体を持ち、草原ではなく湿原を好んで生息しています。

現在絶滅危惧種になっており、野生の個体は2004年の調査時点で100体以下しかいないと推測されています。

 

シフゾウ

シフゾウ属

画像引用元:BioLib.cz

シフゾウは「四不像」「四不相」「四不象」とも表記されることがあり、

  • シカのようなツノ
  • ウシのような蹄
  • ウマのような顔
  • ロバのような尾

を持っているが、どの動物とも一致しないことが名前の由来となっています。

中国などに生息していた野生のシフゾウは1900年前後に一旦絶滅しました。

ところが、イギリスで繁殖に成功した個体を野生に戻したことにより、現在では再び野生のシフゾウが中国でも数百頭見られるようになっています。

 

サンバー

ルサジカ属

画像引用元:TAIWAN TODAY

サンバーは別名水鹿(すいろく)とも呼ばれ、インドやバングラデシュ、スリランカや中国南部、台湾などに分布しています。

水鹿という名の通りサンバーは水辺を好んで生息し、泥浴びを好みます。

大きさはニホンジカより大きく、体毛はニホンジカより暗い灰褐色~暗褐色です。

 

ルサジカ

ルサジカ属

画像引用元:Vacances Aventures

ルサジカはジャワ島やスマトラ島など、インドネシアの島々に住んでいる中型の鹿です。体の割には大きなツノを持つのが特徴です。

同じルサジカ属のサンバーとよく似た見た目をしていますが、ルサジカは水辺ではなく森林を好んで住みます。

またルサジカは夜行性で、昼間森林で休んで、夜草を食べるために草原に出てきます。

 

アカシカ

シカ属


画像引用元:富山ファミリーパーク

アカシカは、ヨーロッパや北アフリカなど広い範囲に分布しているシカです。

古くから狩猟の対象となり、人間の食糧にもなってきた鹿です。

アカシカと名前が似た鹿にアメリカアカシカがありますが、両者は別の種です。

 

ワピチ(アメリカアカシカ)

シカ属


写真引用元:NATIONAL GEOGRAPHIC

ワピチは別名アメリカアカシカとも呼ばれ、さらに北米では「エルク」と呼ばれています。(※エルクとは本来ヘラジカの意味ですが、アメリカアカシカをヘラジカと誤解したヨーロッパの探検家がエルクと最初に呼んだのが現在まで続いてしまっています。)

生息エリアはアメリカ、カナダ、中国、ロシア等広域にわたります。

アメリカアカシカはヨーロッパに生息しているアカシカと比べると身体が大きく、鹿全体の中で見ても2番目に大きい種です。

 

クチジロジカ

シカ属

画像引用元:ZooChat

クチジロジカは、その名の通り口の周りが白い鹿です。

高原を好んで生息し、生息域は標高3,600~5,100メートルの山の上です。

中国にしか生息していない固有種ですが、環境の変化や乱獲などにより、現在絶滅の危険性が高い種に指定されています。

 

  

ホエジカ族

 

マエガミジカ

マエガミジカ属

画像引用元:ZooChat

マエガミジカは、前髪のような黒い毛が前頭部に生えているのが特徴の小型の鹿です。なお、前髪が生えているのはオスのマエガミジカのみです。

またシカとしては珍しく、長いキバを持っているのも特徴です。(オスのみ)
長いキバを持っていますがシカ科ですので草食動物です。

マエガミジカのツノは他の鹿と比べると極端に短く、1~3㎝しかありません。

生息域は中国中部~ミャンマー北東部まで幅広いですが、乱獲や環境破壊により個体数が減少してきています。

 

インドキョン

ホエジカ属

画像引用元:THE ONLINE ZOO

インドキョンはインド、中国南部、ジャワ島、ボルネオ島などに生息する小型のシカです。

大きな声で吠えるホエジカ属の一種で、オスのツノは短く15㎝ほどまでしか伸びません。

 

キョン

ホエジカ属

画像引用元:BBC

キョンは中国東部や台湾が原産の小型のシカです。

日本には元々いなかった外来種のシカですが、動物園で飼われていたキョンが逃げ出して野生化し、現在千葉県と伊豆大島で繁殖しています。
 

千葉県のキョン

千葉県では勝浦市の行川アイランド(閉園済み)から1980年代に逃げ出したキョンが野生化し、房総半島ほぼ全域に増殖し現在では約5万頭となっています。

キョンによる農業被害が相次いでいるため、千葉県は2000年からキョンの駆除に乗り出ていますがキョンの繁殖力のほうが強くて駆除が追い付かず、有効な対策とはなっていない。

 

伊豆大島のキョン

伊豆大島では都立大島公園内の動物園で飼育されていたキョンが1970年代に逃げ出し、伊豆大島全域で野生化しました。

現在の伊豆大島のキョンの頭数は住民の数(8,300人)より多い13,000頭。

伊豆大島の特産品であるアシタバへの農業被害や、絶滅危惧種の植物「キンラン」への食害が深刻であるため、都は2017年、キョン捕獲チーム「キョンとるず」を結成、本格的に捕獲に乗り出している。

 

マエガミホエジカ

ホエジカ属

画像引用元:ZooChat

マエガミホエジカはその名の通り前髪のような毛を前頭部に持ち、鳴き声が吠えるように大きい、小型のシカです。

中国南東部に生息していますが、絶滅の危機に瀕している種に指定されています。

マエガミホエジカは極端に臆病な性格で、研究が非常に難しく、世界的に見てもあまり知られていない種類のシカとなっています。

 

 

オシロジカ亜科

 

ヘラジカ族

 

ヘラジカ

ヘラジカ属

画像引用元:http://bioweb.uwlax.edu/

ヘラジカは、中国、アメリカ、カナダ、北欧、ロシアなどの寒冷地に住む世界最大サイズのシカです。

体長は3mにもおよび、身長は2mを超す個体も。体重は800kgを超えるものもあります。

ヘラジカには様々な別名があり、少しややこしいかもしれません。

  • オオジカ(日本でのヘラジカの別名)
  • エルク(ユーラシア大陸のヘラジカの別名)
  • ムース(北アメリカのヘラジカの別名)

なお、北アメリカでエルクと言うとワピチ(アメリカアカシカ)の意味になります。ややこしいですね。

 

ノロジカ族

 

ノロジカ

ノロジカ属

画像引用元:REALTREE

ノロジカは、ヨーロッパから朝鮮半島にかけて生息しているシカです。

名前の由来は、朝鮮語の「ノル」(ノロジカの意)から来ています。

ノロジカはニホンジカと比べると小型で、体高70㎝前後、体重15~35kg程度の鹿で、寿命は10年程度です。

ノロジカはヨーロッパで良くみられる鹿であるため、「バンビ」は原作の時点では元々ノロジカをモデルにしていました。しかし、アメリカでアニメ化される際に、アメリカの視聴者に馴染みのあるオジロジカへと変更されました。

 

キバノロ

キバノロ属

画像引用元:Wildlife Observer

キバノロは、ジャコウジカによく似た体高50㎝程度の小型のシカです。

中国と韓国に生息しており、ツノは生えませんがオス・メス共にキバが生えています。

この鋭いキバが吸血鬼を連想させるため、しばしばキバノロは「ヴァンパイア・ディアー」とも呼ばれます。

キバノロのオスは縄張り意識が強く、繁殖期にはオス同士がキバを使って激しい縄張り争いを繰り広げることがあります。

 

 

オジロジカ族

 

トナカイ

トナカイ属

トナカイ

クリスマスにサンタのソリを引くことで日本でもなじみの深いトナカイです。

トナカイは北極圏周辺を生息地とし、アラスカ、カナダ、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、ロシアなどに見られます。

また、ソリを引くことからわかるように、家畜としても世界各地に導入されています。

トナカイは体長120~220㎝、体高100~150㎝とニホンジカよりやや大きめです。

また、シカ科の動物で唯一オス・メス共にツノがあるのがトナカイです。

これは、トナカイの生息圏が北極圏であることから、メスも冬季はツノで雪を掘って餌を探さなければならないことが理由です。
 

童謡・赤鼻のトナカイについて

日本でも有名な童謡に「赤鼻のトナカイ」があり、この曲の影響でトナカイの鼻が赤いと思っている人も多いと思いますが、実際はトナカイの鼻は他のシカ科の動物と同じく黒~こげ茶色です。
 


 

 

オジロジカ

オジロジカ属

画像引用元:GAWW

オジロジカは、カナダ~南アフリカにかけてに生息する鹿です。

オジロジカはその名の通り尾の裏側に白い毛が生えています。

危険を察知すると、オジロジカはしっぽを上げて白い毛を仲間に見せ、周囲に危険を知らせます。

ディズニーのキャラクター「バンビ」は当初ノロジカをモデルにしていましたが、北米でアニメ化される際、北米で馴染みのあるこのオジロジカに変更されました。
 

白いオシロジカのドラゴンちゃん

2015年には、遺伝の欠陥で生まれた白い顔に青い瞳のオシロジカのドラゴンちゃんが話題となりました。


画像引用元:カラパイア

これはアメリカのミシガン州にある農園で生まれた鹿で、この容姿ゆえに母鹿から育児放棄され、人間が育てたことで話題になりました。

農園の主、パウエルさんによる献身的な育児にもかかわらず、ドラゴンちゃんは1歳になる前に感染症などのため亡くなってしまいました。

 

ミュールジカ

オジロジカ属
Black-tailed Deer (Odocoileus hemionus)

ミュールジカは、北アメリカ西部に多く生息しているシカです。

ミュールジカはオジロジカの仲間ですが、白いしっぽの先は黒くなっています。

また、オジロジカより身体が大きく、耳が大きいことも特徴です。

ミュールジカの角は特徴的で、他の鹿の角が1本の角から枝分かれするように成長するのに対し、ミュールジカの角はフォーク状に横に成長していきます。

 

アメリカヌマジカ

アメリカヌマジカ属
Cervo do Pantanal ( Blastocerus dichotomus )
アメリカヌマジカは、アルゼンチンやパラグアイ、ブラジルなどに分布する鹿です。

その名前の通り沼地や湿原などを好んで生息しますが、環境の変化などにより数が減っており、レッドリストに登録されています。

 

 

パンパスジカ

パンパスジカ属

画像引用元:WFN

パンパスジカは、南アメリカ大陸の標高が低い草原地帯(パンパス)に住む小型のシカです。

パンパスジカの特徴は、他の鹿のように夏毛と冬毛が抜け換わらないことです。

パンパスジカはブラジルに最も多く生息しています。

近年、環境の変化などにより頭数の減少が危惧されています。
 

プーズー

プーズー属

画像引用元:らばQ

プーズーは、南米チリの固有種のシカで、世界最小のシカです。

体長が70~83㎝程度、体重が7.5~13.4kgと中型犬程度の大きさのシカです。

竹林を好んで生息しますが、密猟などにより数が減り、絶滅が危惧されています。
 

日本で見られるプーズー

日本では埼玉県こども動物自然公園でプーズーを見ることができます。

日本国内でプーズーを飼育しているのはここ1か所のみとなります。

2017年にはオスの赤ちゃんも生まれるなど、順調に飼育されているので世界最小のシカを観に行ってみてはいかがでしょうか。

 

オナシプーズー

プーズー属

オナシプーズーはプーズー属の中でも一番小さい鹿で、コロンビアのアンデス山脈やペルー、エクアドルに分布しています。

体高わずか35㎝程度で、体重3.3~6kgですので、小型犬ぐらいのイメージです。

ツノは6㎝程度で、プーズーよりも標高の高い場所を好んで生息します。(標高2000~4000m)