鹿の角

このページでは鹿の角について解説していきます。

なぜ鹿には角が生えているのか

なぜ鹿のオスには角が生えているのでしょうか。

鹿は草食動物であり、外敵に対して噛みついて反撃するための鋭い牙などは持っていません。

このため、鹿の角は外敵から身を守るための1つの道具となっていると言えるでしょう。

また、鹿は発情期になるとオス同士でツノで突き合って縄張り争いをしたり、メスの取り合いをしたりします。

このように、外敵から身を守るため、また鹿の群れの中でより優位に生き残っていくための武器になっています。

 

角が生えているのはオスの鹿だけ

奈良公園などで鹿を見たことがある方は、角が生えている鹿と生えていない鹿の2種類いることに気付いたかもしれません。

これはオスとメスの違いで、オスには角が生えていてメスには生えていません。

また、生まれて1年以内の子供のオス鹿にもまだ角は生えていません。

ツノは1年ごとに生え変わる

オス鹿の角は1年ごとに生え変わります。

角が生えはじめるのは4月ごろ。最初はツノというより「袋」といった感じの「袋角(ふくろづの)」が出来ます。

5~8月にかけて角は2又、3又と分岐して急成長し、9月ごろには立派な角が完成します。

鹿の角は成長期には1日に3㎝も伸びます。これは動物の組織の中で最も成長が早い部類に入ります。

完成した角は9~11月の繁殖期にオス同士で縄張り争いをする際に武器として使用されたりします。

3月ごろになると鹿の角は一旦抜け落ちます

1年ごとに角が抜け落ちる理由については諸説ありますが、冬の間に消耗した体力を少しでも早く回復させ、身体を大きくするためだと言われています。
角があると角の成長に余計な栄養を取られてしまうため、体力の回復が遅くなってしまうのです。

以下は、鹿の角が抜け落ちる決定的瞬間の撮影に成功した動画です。
動画の前半で1本、後半でもう1本の角も自然に抜け落ちています。

 
 

 

ツノを見れば鹿の年齢がわかる


画像引用元:わくわく奈良ガイド

1歳以上のすべてのオス鹿に生えているツノですが、若い鹿ほど分岐が少なく細く、年齢が進むにつれてツノが太く大きく、分岐も多くなっていきます。

初めてのツノが生えたばかりの1歳の鹿はまだ分岐していない細い1本角。

2歳になると2又に分岐する鹿もいますが、まだ太さは細いです。

3歳になると2又か3又、大きさも大きなものが生えてきます。

4歳以上の鹿は、「これぞ鹿の角!」といった感じの立派な角が完成します。3又に分かれて太さも太く、大きさも鹿の顔より大きなものが生えています。

また、10歳以上になるとツノは縮小していく傾向にあります。

鹿の角の加工例

古来より鹿の角は様々に加工されて人間に利用されてきました。


画像引用元:西広貝塚展

古くは縄文時代から鹿の角を用いた刃物や矢じり、釣り針や装飾品などが作られていました。日本各地の貝塚や遺跡からこれらの鹿角製品が出土しています。


画像引用元:人形の松川

また、真田幸村などの戦国武将が兜に飾りとして鹿の角を付けていたことも知られています。

現代においては鹿の角は工芸品や印鑑、アクセサリーなどに加工されることが多いです。

以下に代表的な鹿角の加工品についてご紹介します。

鹿角細工


奈良県の伝統工芸品です。アクセサリーや置物をはじめ、箸や帯留め、ペーパーナイフなどの実用品も作られています。

工芸品



画像引用元:ブッシュクラフト.JP

インテリア

頭蓋骨付きの鹿の角

鹿の角はインテリア用のオブジェとしても人気があります。

代表的なのは、鹿の角と頭蓋骨が一緒の状態のものを壁に飾るオブジェです。


画像引用元:RoomClip

値段は状態によってピンキリですが、頭蓋骨付きの鹿の角は角が分岐していない小さいものでは4,000円台~、角が3又に分岐して太いものだと2万~10万以上するものまであります。

値段は太さ以外にも、角の分岐が左右対称なものだとより高くなります。

1本の鹿の角をオブジェとして飾る

1本の鹿の角であれば、2本対になった頭蓋骨付きのものより値段も安く、手軽にインテリアに取り入れることが出来ます。

もちろん、オブジェとして玄関やリビングの壁に飾るだけでもオシャレですが、下の写真の例では鹿の角の分岐を上手く利用してタオル掛けとして実用的に使用しています。


画像引用元:RoomClip

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刀剣を飾る台にも最適


画像引用元:RoomClip

和風の部屋なら、刀掛け(かたながけ)として鹿の角の分岐を利用するのもインテリアにピッタリです。

漢方薬としての鹿の角

中国では今から2000年以上前から鹿の角が漢方薬「鹿茸(ろくじょう)」として活用されています。

この鹿茸という漢方薬は、春先に生え始めたばかりの柔らかい鹿の角「袋角(ふくろづの)」から作られます。


画像引用元:窓辺の小太郎

この生えかけの鹿の角の先端には、

  • エストラジオール(女性ホルモン)
  • アデノシン三リン酸(ATP)(筋肉を動かすエネルギー源)
  • コンドロイチン硫酸(軟骨組織に多く存在)
  • IFG-1(インシュリン様成長因子)

などが含まれており、鹿茸は古来より強壮、強精、鎮痛などに用いられてきました。

秋の立派に伸び切ったツノは硬く、角切りで切り落としても鹿は痛みは感じないそうですが、さすがに若く柔らかいツノを切り落とすというのは鹿にとっては痛そうですね。

この鹿茸が含まれる漢方薬には

  • 鹿茸丸(ろくじょうがん)
  • 鹿茸大補丸(ろくじょうたいほがん)
  • 内補鹿茸丸(ないほろくじょうがん)
  • 鹿茸散(ろくじょうさん)
  • 内金鹿茸丸(ないきんろくじょうがん)

などがありますが、日本で一番手軽に手に入れられるのは「鹿茸大補丸」です。

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国内では主に強壮剤として使われることが多いようです。