オスの鹿にはツノが生えています。鹿のツノは外敵から身を守るためであったり、発情期にオス同士でツノを突き合わせて縄張り争いをしたり、メスを取り合ったりします。
しかし、多摩動物公園にいたシフゾウ(シカ科の一種)のメスのエリーには、ツノが生えていました。
シフゾウとは?
メスなのにツノが生えていた多摩動物公園のエリーは、シフゾウというシカ科の動物でした。(平成28年8月に残念ながら亡くなりました。)
シフゾウという鹿は、日本ではあまりなじみがないかもしれません。シフゾウとは、漢字で書くと「四不像」(中国読みではスープシャン)です。「ツノは鹿、頭はウマ、身体はロバ、ひづめはウシに似ているけれど、そのどれでもない動物」のことです。
19世紀末には自然界では絶滅してしまったのですが、動物園にいたのを繁殖し、中国では野生に戻すまでに個体数は回復しています。日本では、4つの動物園に10頭います。
メスのシフゾウのエリーにツノが!
画像引用元:東京ズーネット
エリーは、1998年生まれのシフゾウのメスでした。エリーには、オスにしか生えないツノが生えていました。年齢とともに雄化する傾向を持つ動物もいますが、エリーのツノは2度生え変わり、よりオスに近い状態を示していました。
2010年ごろより、エリーの頭部にこぶ状のふくらみができ6㎝まで伸びた後、2014年2月に落ちました。(普通、シフゾウのオスのツノは、毎年生え変わります)
その後、エリーのツノは生え変わって枝分かれし、2014年末には再び落ちました。
3度目のツノも生えました。
なぜメスのエリーにツノが生えたのか
先ほども書いたように、年を取って雄化する動物はいるそうです(人間でも、おばあちゃんにヒゲが生えていたりしますよね)。
エリーの死後、エリーを解剖した多摩動物公園のお話によると、エリーの卵巣が委縮していたそうです。「高齢化によりホルモンバランスが崩れ、雄性ホルモンが優勢になったのではないか」とのことです。
また、驚くべきことに、エリーのお姉さんも高齢期にツノがあった時期があるそうなので、血縁関係やツノの成長サイクルとホルモンの関係を調べなければならないと、専門家はみています。
おわりに
シフゾウは、オスとメスで体の大きさが違います。メスの方がだいぶ小さいようです。オスに比べて小さいエリーにツノが生えてきたことをエリーはどんなふうに感じていたんでしょうね?
現在、日本国内には、秋田、東京(多摩)、広島、熊本の4つの動物園でシフゾウを見ることができます。一度、見てみたいですね。