「奈良市街を鹿50頭が爆走」?その真相は…

2018年5月14日から15日にかけて、TV各局は、「奈良市街を鹿50頭が爆走」と相次いで報道しました。「市街地」「鹿50頭」「爆走」とセンセーショナルに報道され、あっという間に全国ニュースになりました。

でも、本当のところはどうだったんでしょう?奈良に生まれ育った筆者は、専門家の意見にうなずきながらも少々の違和感を感じました。

50頭のシカが「爆走」した状況

2018年5月13日午前6時ごろ、近鉄奈良駅から徒歩2分ぐらいの、古民家が立ち並ぶ市街地の中心で、鹿50頭ぐらいが、奈良女子大学の方にいっせいに走っていくところに遭遇した撮影者は、ご自分のスマホで撮影後、Twitterに投稿されました。

午前6時と早朝のため、人通りも少なく、撮影者も驚かれたと思います。

その投稿がSNSを通して拡散され、TV各局がニュースやワイドショーで報道しました。

専門家の意見

テレビ

鹿の生息に詳しい奈良教育大学の鳥居特任教授(哺乳類額)によりますと、「奈良公園の草は観光客に踏み荒らされておいしくないから、以前から鹿たちは奈良女子大学キャンパス内に草をよく食べに来ていた」そうです。
「鹿は普段10頭ぐらいの群れで生活しているが、その時は偶然いくつかの群れが合流したのでしょう」「何かがあって、先頭の1頭が走り出したため、つられて後続の鹿たちも走り出したと思われます。」とのことです。

ワイドショーでの識者間の話では、
「小さい子供が、鹿にドーンとぶつかられたら危ないです。」
「角があるし、大けがしますよね。
「人的被害がないから笑えましたが、今後そういうわけにはいかない状況になりそうです。」

など、「ここは本当に日本?」「恐怖映像」などという方向で話しが進みました。

奈良に住んでいる者として感じたこと

あの映像を見られた方それぞれの感じ方にもよると思いますが、筆者は、「爆走」している風には感じませんでした。後ろの方の鹿など、「えっ?!走るの?」という感じに見えました。

奈良公園で行われる「鹿寄せ」のときなど、ホルンの音を聞いた鹿の群れは、ドングリをもらおうと向こうの林からどーっと走ってきます。怖いというより、鳥肌が立つほど感動します、小さな鹿も遅れまいと一生懸命走ってくるところが健気でさえあります。

たしかに、近年、鹿が近隣地区の田畑を荒らしたり、交通事故に遭ったり、観光客とトラブルになったりするニュースがありますが、昔より奈良では、鹿と人間は共存してきました。

もちろん、人気のない道で50頭もの鹿に遭遇したら驚くかもしれませんが、実は鹿だってドキドキしているはずなんです。

「爆走」「恐怖体験」などとむやみに煽らず、静かに見守ってほしいと思います。

おわりに

草を食む鹿

奈良に生まれ育ち、今も奈良に暮らしていて、奈良公園の鹿大好きな筆者の独りよがりな意見かもしれませんが、あまり大騒ぎせず、あまり煽らず、そーっとしておいてほしいな・・と思います。