昭和時代に奈良公園に生まれた鹿の「白ちゃん」。
その特徴的な容姿ゆえに悲劇的な運命を辿った白ちゃんは、今も鹿と人間の共存について人々に考えさせてくれます。
奈良公園の「白ちゃん」とは
白ちゃん(シロちゃん)とは、1954年(昭和29年)に奈良公園で産まれたメスの鹿です。
このメス鹿は、生まれながらにして頭のてっぺんに白い毛が生えていました。
まるで白い王冠をかぶったような鹿の姿はたちまち話題となり、人々から「白ちゃん」や「女王」と呼ばれて親しまれるようになりました。
白ちゃん初めての出産
白ちゃんの初めての出産は他のメス鹿と比べてだいぶ遅く、9歳の時でした。
一般的にメス鹿は2歳ごろから毎年小鹿を産むのですが、白ちゃんが小鹿を産んだのは後にも先にもこの9歳の時の出産1回だけでした。
頭に白い毛が生えていることで観光客から珍しがられて、追い回されることが多かったようなのでストレスから子供ができにくくなっていたのかもしれませんね。
また、頭の毛の色が違うことで鹿の仲間からは仲間外れにされていたそうですので、そちらもストレスだったのかもしれません。
わが子を交通事故で失ってしまう白ちゃん
9歳でようやく子供に恵まれた白ちゃんでしたが、なんとその16日後に生まれたばかりの我が子を交通事故で亡くしてしまいます。
白ちゃんの子供を撥ねたのは白い乗用車だったため、その後白ちゃんは白い自動車を見ると攻撃するようになってしまいました。
我が子をはねたのと同じ白い車を見ると、白ちゃんが興奮して車道に飛び出してきてしまうため、奈良公園周辺の道路ではボランティアが運転手に事情を説明し「この区間はゆっくり走ってください」とお願いすることもあったようです。
1972年(昭和47年)、自らも交通事故で亡くなった白ちゃん
白い車に向かって敵意を示し、車道に飛び出して行こうとする白ちゃんを人間は必死に止めようとしていましたが、ある日白ちゃんは交通事故で亡くなってしまいます。
1972年、18歳でのことでした。
奈良公園のメス鹿の平均寿命は20~25年ですので、平均寿命まで生きられなかったことになります。
亡くなってしまった白ちゃんの頭部の剥製は、今でも奈良公園にある「鹿苑」で見ることができます。
おわりに
現在でも奈良の商店街が白ちゃんのゆるキャラを作るなど、皆の心の中に生き続ける白ちゃん。
子供を交通事故で失ったのをきっかけに人間を嫌いになってしまった白ちゃん。
人間と鹿の関係について深く考えさせられる話ですね。
ちなみにこのお話は本にもなっています。
当時の白ちゃんの写真も沢山載っていますので、興味のある方は是非手に取ってみてください。
鹿との交通事故を避ける運転のコツについては、以下の記事も参考にしてください。
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