「電車が鹿と衝突した影響で電車が遅延している!」
そんな経験、ありませんか?
そもそも鹿はなぜわざわざ線路に入ってくるのでしょうか。
鹿と鉄道の切っても切れない関係を見てみましょう。
Contents
列車と鹿の衝突事故
皆さんは列車運行情報で遅延の理由として
- 動物との接触のため
- シカと衝突のため
- 動物支障
などのアナウンスを聞いたことがないでしょうか。
下の動画は日本国内で撮られたものですが、線路上に迷い込んだメス鹿の群れが電車に撥ねられそうになって逃げまどっています。
the train way passes
Like every day
This is a beautiful moment. ???????????? pic.twitter.com/vRjiZ5A9pu— Md-Furqan ?? (@mdfurkan8080) 2018年1月31日
鹿が線路に入ってきたため汽車や電車が遅れることは日本ではよくあることで、その数は年間5,000件にものぼると言われています。
列車の下に鹿を巻き込むような事故だと事後処理にも多大な時間がかかり、損失も大きくなるため鉄道各社は昔から鹿対策に頭を悩ませています。
昔からある鉄道の鹿よけ対策
昔ながらの鹿よけ対策には以下のようなものがあります。
線路わきに柵を設置する
一番スタンダードな対策ですが、すべての線路脇に柵を設置するのは現実的に考えると予算面などからも難しいです。
しかも鹿は跳躍力があるので、半端な高さの柵では飛び越えられてしまいます。
鹿が嫌う動物などの臭いを散布する
こちらも古くからある手法で、JR東日本・西日本を始め鉄道各社で取り入れられてきました。
草食動物である鹿の天敵、ライオンやオオカミなどの肉食動物の糞尿を薄めて線路に散布することで鹿への忌避効果を狙った対策方法です。
この対策は一時的には効果がありますが、雨が降ると臭いが流されてしまって効果が無くなるというデメリットがあります。
鹿が嫌う音をスピーカーから出す
車両に設置したスピーカーから、鹿が嫌う音を出して鹿に線路から出て行ってもらおうという対策ですが、こちらもあまり効果は高いとは言えないようです。
鉄道各社による最新の鹿よけ技術
近年、天敵の不在などにより日本の鹿の数は急激に増加しています。
このため、鉄道各社も昔ながらの対策方法だけではなく新しい鹿対策技術を次々と開発しています。
ここからは、鉄道の鹿除けの最新技術をご紹介します。
車両前面にゴムを付けた「やわらか車両」
こちらは2012年にJR東海が開発した「やわらか車両」。
鹿と衝突しても死なないように車両の前面にゴム製の衝撃緩和装置を装着し、鹿と当たったら鹿を優しく線路の外に押しのけられるようにした対策です。
列車と衝突した鹿が線路上で死んでしまった場合、死骸の処理などで運行再開までにに時間がかかりますが、ゴム製クッションで優しく押し出して鹿が自力で山に帰ってくれれば運休時間を大幅に減らせます。
JR東海では、鹿との衝突事故が特に多い紀勢線の特急列車にこの装置を導入しました。
2012年の導入以来、実際にスポンジゴムで鹿を線路の外に押しのけることにより運転再開までの時間短縮などに効果を上げています。
鹿踏切
出典:近畿日本鉄道株式会社
こちらは近鉄が開発した鹿専用の「鹿踏切」。
鹿が作った獣道の近くに、鹿が横断できるような「すき間」をわざと作っておきます。
そして、電車が少ない時間帯は鹿を自由に通行させてあげて、電車の運行が多い時間帯には鹿が嫌がる超音波を流して横断しないようになっています。
以前鹿との衝突事故が頻発していた区間に設置したところ、設置後7か月たっても衝突事故がゼロという優秀な成績を残しました。
出典:近畿日本鉄道株式会社
このため、他の鉄道各社からも問い合わせが相次ぎ、設置するケースも出たほか、2017年にはグッドデザイン賞も受賞しました。
シカ対策システム ユクリッド
こちらは日鐵住金建材が2016年に発売した鹿の線路侵入防止システムです。
侵入防止策「ユカエル」と誘鹿材「ユクル」の2つを組み合わせることで、鹿による被害を減らす仕組みになっています。
そもそも鹿が線路に入ってきてしまう一番の原因は、鹿が線路の鉄分を求めて来ているためだ、ということも同社の研究により明らかになりました。
鉄分を求める鹿といえば、下の動画にあるように奈良のシカも道路に設置されている鉄の鎖を好んで噛むことで知られています。
鹿は塩分や鉄分を求めているので、その塩分と鉄分を「こちらですよ」と線路から離れたところにあらかじめ置いておき、鹿に好きなだけ摂取してもらうのです。
そのうえで、線路わきには鹿が入りにくいような角度で柵を設置します。
万が一柵の中に鹿が入ってしまった場合は、今度は逆に外には出やすいような角度になっているというスグレモノです。
この「ユクリッド」システムを鉄道の線路脇に設置したところ、鹿が線路に来ないように誘導することが可能になったというので効果もバッチリ。
鹿の行動をうまく誘導してやる優れたシステムですね。
おわりに
記事中に書いたように、最近開発された鹿よけシステムの中には、高い忌避効果を持つものがあります。
しかし、鉄道のすべての区間にこれらのシステムを導入するのは費用面でも現実的ではないため、今後列車と鹿の衝突は件数は減っても起き続けてしまうと思います。
線路に入ってくる鹿を一方的に悪者と決めつけるのではなく、なぜ鹿が線路に入ってくるのかを研究したり、鹿を極力傷つけないように線路外に出すなど、人間による鹿目線での研究が日々進んでいるのは大変いいことだと思います。
これからも、鹿と人間のより良い共存を目指して様々なアイディアが出てくることでしょう。
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