日本にいる鹿は、奈良公園にいる鹿を含めてほとんどが野生の鹿です。そのため、家畜として鹿を飼うというシチュエーションがイメージしづらいかもしれません。
今回は、日本と世界の養鹿事情についてご紹介します。
人間による鹿の各部位の利用
近年、野生の鹿による農作物などへの被害が深刻になり、鹿の捕獲頭数も増えてきました。さらに、鹿をただ殺処分するのではなく資源として活用しようという動きも盛んです。また、昔から人間は鹿のあらゆる部位を利用してきた歴史もあります。
以下に、人間による鹿の各部位の利用例をご紹介します。
- 鹿肉: 日本でも最近は、ジビエブームで鹿肉を食べさせるレストランが増えてきました。西欧では、鹿肉は、ベニスンと呼ばれ高級肉です。
- 鹿革:鹿革は柔らかく、強いという特徴を持っています。また、吸湿性・通気性に富み、昔から衣類やバッグなどに加工されて利用されてきました。鹿革の基礎知識についてはこちらの記事もご参照ください。
- 鹿茸:鹿の幼角・袋角のことです。漢方では、強壮剤として人気です。
- 角: 飾り物としてハンターの一番の獲物です。インテリアとして飾るのも人気です。鹿の角についての詳細はこちらの記事をご参照ください。
日本の養鹿事情
1980年代後半から90年代にかけて、北海道で鹿牧場が相次いでオープンしましたが。しかし、その後経営的に行き詰まり閉鎖しました。現在では観光客向けのシカ牧場は北海道・長崎・愛媛など日本に数軒しか存在しません。
最近のトレンドとしては、野生のシカを捕獲して一時的に飼育した後食肉などに加工する「一時養鹿」が注目されています。増えすぎたエゾジカを資源として利用しようとする北海道のほか、徳島県などでも実施されています。
また、先ほどご紹介した鹿の角から取れる漢方薬の精力剤「鹿茸」を生産するために鹿を飼育している企業も1社あります。
世界の養鹿事情
次に世界の養鹿事情について見ていきましょう。家畜として鹿を飼う行為は、北極圏などで古くからトナカイの遊牧がおこなわれています。
中国では、鹿茸を取る目的で鹿を利用してきた歴史があります。1950年代から、国営養鹿牧場が各地にできています。
世界的に見ても、現在養鹿が産業として確立されているのはニュージーランドのみと言ってもいいでしょう。ニュージーランドから、ヨーロッパ各国などに鹿肉を輸出しています。
ヨーロッパでは鹿肉は高級食材であり、鹿肉の最大の消費国はドイツです。ドイツの鹿肉年間消費量は4万~4.5万トンで、その約半分を輸入に頼っています。
まとめ
可愛らしい鹿の姿だけを見ていると、なかなか鹿を食べたり利用したりというシーンを想像するのは難しいかもしれません。
しかし、現実的には、鹿による農業被害、山林被害は無視できない規模に拡大してきています。
鹿と人間の共生のために、日本でも世界の養鹿事情に学んでいく必要があるのかもしれませんね。
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